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26Oct

開静時(文伊SS)

Posted by ついり in SS

 生きてますおひさしぶりです。
アンソロ脱稿後グループ展で公開制作することに
なり未だ趣味絵を描けない状態です(…)
というか学祭後はサークルにも顔出せてない今日この頃…

なんか最近になってオリジナル熱が次第に上がってきて
そのうちピクシブで今考えてるネタを出そうかなと思ってます

あと前々から地味にコツコツ書き続けた文伊SSをついったにて
公開したのを期にこっちでも載せときます
一体いつから書き始めたんだこのネタ…
ちなみに年下攻め文次郎×未亡人亡霊伊作という設定です(食伊前提)

いつか文伊で本出したい野望があったりなかったり


 
 
 
 
 
嘗てあの廃寺は昔から物の怪やら幽霊の類が憑いているとの噂で畏れられていたが、もはや今はそのような話も忘れられただの廃屋にすぎない(もちろん噂が消えただけで人は以前と変わらず寄りつかずあるが)だが、自分がまだ餓鬼の頃から最後の離別に至るまで 確かに彼はそこにいた
 
 
 
開 静 時
 
 
 
 
 
山奥の小さな村だった。さして人口も多くなく、農業で生活を営んでいた村人の過半数が大人や年寄りであった。そんな中でも同じ年の子供がいない訳ではなく、少ない人数であるからこそ親しみが深いもので寂しいと思ったことはない。されども家が貧しいが為に奉公先へと出される子や、人買いに引き渡される子が次第に出始め、只でさえ少ない子供が減少していく。自分はその中でどちらかと言えば他の子より幾らか裕福な方ではあったが、贅沢は敵だという生活方針の下育っていった為他の子とそう大差はないと感じていた。友達の数も減るとその分寂しさを紛らわせるために一人修行と称し、普段誰も立ち入らぬ山奥まで散策しに行ったものである。今思えば餓鬼じみた無鉄砲過ぎる挙動だと思わざるを得ない。そんな無鉄砲さが思わぬ邂逅を引きつけたことを考えればは当時の己を賞賛すべきであるが。子供の足で幾ら歩いただろうか。次第に道が獣道じみ、梢から差し込む光も段々と少なく不安が募り出してくる。しかし普段気丈な性分で弱味を出すことを嫌う己自身の自覚がある為に、恐怖を押さえ込みながら地を踏みしめた。やっと少しの木洩れ日が先を照らす。すると文
次郎は光の中にある何かに気づいた。寺のようなのだ。近づいて凝視するとそこら中ガタがきていて屋根の半分は苔むしている。それはただの廃屋だった、だが妙なことに僅かだが人がいる気配を感じ取れた。
どうしたんだい、こんな所に
背後から不意に声を掛けられ、見るとそこにいたのは人の形をした『何か』だった。それが生きている者ではないとすぐに悟ったのは(今差している陽光の中自分と彼は立っていたのだが)その彼の体は半透明で日差しが透け向こうの木々が薄く見えていて足元には影が欠片もない。おまけに掛けられた言葉は声帯を介して伝わったものではなく、自身の頭脳に直接響いていたのだと理解した。だがそんなことよりも、目の前の彼の容姿に無意識に心奪われる。まず目に入ったのは緩く癖のある髪の焦香。それが陽に当たり白茶、赤白橡、洗柿に輝いて涼風に僅かになぶられる様は神秘的にも感じられる程で。見た目より年嵩なのだろう雰囲気に、ややつり目がちではあるが大きな瞳を乗せた柔和な顔立ち。元は大層立派なものらしき装束は年月を重ねて殆ど襤褸を身に纏っているようなものだが、彼は美しかった。
「おま…いや、あんた、何者なんだよ」
…そうだね、今の自分が何なのか、私にもわからないんだ
「じゃ…」
狼狽する己に彼はくすくす笑いながら、その手を肩に乗せてくる。不思議なことに陽光に透けた手は自分の体を通り抜けず、また微かではあるが温もりを感じるのだ。
「…幽霊じゃないんだな」
どうかな…少なくとも死んでいることは間違いないんだ
「…おれ、潮江文次郎……あんた名前、なんだ?」
次々と質問を投げかけてくる自分に目の前の彼は大きな瞳を丸くして、そしてくすっと穏やかな笑みを浮かべる。
「なんだよっ…普通会ったら名前聞くもんじゃねぇのかよ」
いや…あまりに私に物怖じせず話しかけてくるものだから
「ッ悪かったな物怖じしなくてよ!」
ごめんごめんと相も変わらず薄く笑う彼は、善法寺伊作という名だった。彼は生前はこの寺の住職の代理をしていたらしく、目の前の廃寺に死後ずっと存在していたと言う。何故霊魂と違い実体に限りなく近い存在なのかはわからないが、その事実は却って文次郎自身を安堵させた。しかしもっと詳しい事情を聞きたがっても、あまり身の上を明かしたくない質なのか何か言えない訳でもあるのか。それ以上は困ったように薄く柔らかな笑みを浮かべるだけで話す素振りを示さなかった。彼は自身を視た人間は文次郎が初めてだと少し口端を上げ言う。
いつか、もう暫く経ったらきみに私のことを話してあげるよ
「約束だぞっ!絶対約束だからな!」
 
 
それからの自分は暇があれば必ず彼の元へ顔を出しに行き、他愛もない世間話を披露する。よく見ると廃屋は外は只の襤褸屋だったが、内面は意外とそこそこ人の手の入っているようではあった。
「お前さ…変な奴だよな」
…出し抜けになんだい、いきなり
「幽霊の癖に足あるし、飯だって喰えるし、こうやって俺にも触れるのが変だって言ってんだよ」
随分な言い草だなぁ
「うるせえ」
柔らかく笑う彼の腹を小突くと、やったなとばかりに俺の首に手を回しぎゅう、と抱きしめられる。途端に彼の匂いが鼻腔を掠め、妙な気分になりそうなのを隠しながら「子供扱いするなバカっ」ともがき離れた。思いがけず突然できた年の離れた友に今までの仲間とはどこか違ったもどかしい感覚を覚えながらも気のせいだと無理に自身を納得させる。
時が過ぎて四季が一回りした頃、変わらず伊作の元を訪れた文次郎は廃屋の片隅に隠れて薄く埃を被ったものを見つけた。黄ばんだ紙の切れ端だと思っていたものは、絵だった。相当腕の良い絵師が描いたのだろうそれは、日に当たり所々線が薄くなっているものの、描かれている二人の人物の表情ははっきりと判る。片方の人物は茶筅髷の黒い髪に背が高く眉がくっきりとしたなかなかの美丈夫で、切れ長の鋭いつり目が強く印象を残す。もう一人彼に寄り添っている方は一瞬女性かと思ったが、その姿形はどう考えても…
「伊作…?」
……見つけてしまったようだね
不意に背後から姿を表した伊作にびくりと驚きに身を竦ませたが、すぐに立ち直った。
「何なんだ…これ、隣にいるの伊作だろ」
うん
「この…隣の奴は誰だよ」
そうだねぇ…僕の、旦那さま かな?
 
 
 
 
たった一言のそれが心の臓の奥を重い一撃で貫かれたような痛みを齎した。ここ最近は病などかからずにいたのに何故胸が痛くなるのか訳も分からず刺された心の臓は激しく鼓動を繰り返し苦しさが増していく。
「旦那…って、なんだよそれ」
ふふ…まぁ言っても良くわからないだろうね
 
確かこれを描いてくれた子は君ぐらいの年の子だったなぁと何の気なしに言葉を続ける伊作に酷く苛立ち、いたたまれなくなる。心の臓に仄暗い水が流れ込み、息ができない
 
この頃は戦もあまりなかったからのんびり暮らして…文次郎っ!?
 
伊作が呼び止めようと肩に手を掛けるのを振り切り、我武者羅に走り去った。これ以上聞いていられない、何が何だかわからないが一気に頭に血が昇っていってどこへ行くかも考えないまま足の裏に血の滲むまで走り通した。



to be continued...

 
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